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第一艦隊から、緊急通信が入る
急いで回線を開く
こちら敷波、大変だよ司令官!
報告している敷波の後ろでは、戦闘音が聞こえる
どうやらまだ戦闘中の様だ
やけに慌てている様子なので、落ち着いて報告をする様にと言うと
えっと敵主力艦隊と戦闘中、敵雷巡洋艦の雷撃で朧が戦死しちゃって
敷波はかなり動揺が激しい、朧が戦死した為か?
それで龍田さんが、キレて勝手に敵に突っ込んで行って・・・
もう、どうしたら良いか、分かんないよ!
涙声で叫ぶ敷波
なるほど旗艦の龍田が暴走して、指揮が取れていないんだな
俺は現状把握の為に、手短に敷浪に質問する
現在艦隊の損害状況は?
えっと、朧の戦死以外は、私が軽傷なだけだよ
分かった、では敷波は朧の遺体を確保、残りの3人で龍田を援護しろ!
まだ戦闘が続いている以上、俺が取り乱す訳にはいかない
潮、姉妹が戦死して辛いだろうが、まだ戦闘中だ、頼む
俺の呼びかけに潮は涙を流しながらも
了解です、と答える
敵の残存戦力は、旗艦の軽巡洋艦、雷巡洋艦、駆逐艦がそれぞれ1か
敵旗艦はかなり損傷があるな・・・
雷巡洋艦さえ叩ければ、残りの戦力でもいけるかもしれない
俺は龍田に通信を入れる
龍田、まだ理性が残っていたら、雷巡洋艦を狙え!
龍田からは返答は・・・
許さないから・・・
と小さく聞こえただけだった
だめか、俺の声は届いていないか
しかし偶然か、声が届いたのかは、分からないが
龍田は雷巡洋艦を狙う
そして凄まじい連続攻撃で雷巡洋艦を、あっさりと沈める
これなら行ける、そう確信した俺は
潮、暁、雷に残った敵艦の掃討を命じる
潮「仲間を傷つけるのはだめです!」
暁「もう、許さない…許さないんだから!」
潮が旗艦の軽巡洋艦を
暁が駆逐艦を、それぞれ撃破し
雷の出番の前に、戦闘は終了していた
龍田が敵の残骸の上に、満足そうに立っていた
MVPはその龍田だ
雷から、艦娘のパーツを拾ったと報告が入る
俺は龍田に、再度通信する
おい、龍田、聞こえているか?
暫くの沈黙の後、なぁに? 私今凄く気分が良いのよ・・・
セリフとは裏腹に、龍田の沈んだ声が聞こえた
作戦完了だ、戻って来い
龍田の精神状態はまだ不安定だろう、心配してそう言ったのだが
嫌よ、もっと戦わせて♪
薄っすらと笑みを浮かべながら言う龍田
しかしもう敵は全滅している、一体誰と戦おうと言うのか
やはり龍田の状態は、まだ落ち着いていないな、そう判断した俺は
明日また戦わせてやるから、今日は戻って来るんだ
龍田の説得にかかる、しかし龍田は
私と一緒にいる艦娘が、また沈んでも知らないわよ?
低い声で答える
やはり目の前で戦死者が出たのを気にしているか
朧の死は・・・お前のせいじゃ無い
そう言って思い出す、龍田にとっては目の前で仲間が死ぬのは2度目か
天龍の時の事が、フラッシュバックしているのかもしれないな
そぉお? 私は次々と仲間を死なせていく、死神かも知れないわよぉ?
言いながら死神が鎌を振るう様に、手にした槍を振るう
死神は・・・仲間の死でキレたりはしないさ、戻って来い龍田
強く力を込めて言うと、暫くの沈黙の後
ふふ♪ そうね・・・分かったわ、貴方の元へ帰るわ
どうやら俺の思いが通じた様だ、第一艦隊が帰還を開始する
俺が、第二艦隊に通信を入れると
既に南方泊地に帰還していた
綾波から簡単な報告を受け、補給する様に指示を出す
報告まとめ
綾波・錬度30 深雪・錬度25 睦月・錬度25
磯波・錬度25 漣 ・錬度22 不知火・錬度21
その後、睦月に入渠しておくように伝える
第二艦隊への指示が終わった頃、第一艦隊も戻って来た
朧の遺体は工廠に安置してきたとの、報告を受ける
そして第一艦隊にも、補給の指示を出した
補給の後、敷波をドックに連れて行き入渠を行う
目の前で妹を失い
すっかり、いつもの元気が無くなっていた
俺の前では泣いたりはしないが、その目は腫れている
きっと帰還中には、泣いていたのだろうな
そんな彼女に、暖かい飲み物を買って手渡し
俺は、ゆっくり休養する様に伝えた
その後、自室へと戻る
朧をまた、死なせてしまった・・・
部屋で1人になってから、その重みに絶えられず
俺の頬を、涙が濡らしていた
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